Tableau(タブロー)でCPM分析を実施してみる
Tableau(タブロー)でCPM分析を実施してみる
CPM分析とは
CPM(Customer Portfolio Management( = 顧客ポートフォリオマネジメント))分析とは、CRMにおいて、「中長期」的に顧客育成状況をグループ化(=ポートフォリオ)して把握しながら適切にマーケティングアプローチするためのトリガーを探すための分析手法です。おおむね、顧客を10個のグループ(=セグメント)に分類することが一般的です。その分けられたグループそれぞれで次の上位グループへシフトさせるための打ち手を整理することが重要です。自社の事業ドメインに合わせ、必ずしも10個のグループに分類する必要はないでしょう。本日は、一般的な分類で用いられる10のグループとその打ち手を整理したいと思います。 ※ 広告指標のCPMとは関係ありません。
今回のイメージ(Tableauダッシュボード)
今回の最終ゴールイメージは、下記のTableau(タブロー)ダッシュボードです。
ダッシュボード構成は、①5個のグループ(セグメント)を現役客と離脱客で分割したクロス集計表と②散布図、同様に現役客と離脱客ごとに分割した③顧客別最終購入日別の顧客数グラフ、最後に、④顧客リストテーブル表の4つで構成されております。あとは、それぞれのグループを分類するための閾値をパラメータコントロールで設定可能としております。
顧客グループの考え方と分類基準を整理する
顧客グループの考え方および、分類基準は下記の通りです。なお、注意が必要なのは、分類基準は一般的なものにこだわる必要はありません。自社の事業ドメインに合わせてむしろカスタマイズすべきだと考えます。みなさまも、積極的に自社独自の勝ちパターンで分類基準を設計してみてください。ただし、MECEになるように設計してください。
まずは、下記の基準で5グループに分けます。
(1)初回購入日から最終購入日までの期間(=在籍期間というイメージ)を軸に考える
初回購入日から最終購入日までの日数の差:0
:初回客(=つまり1回しか購入していない客))
初回購入日から最終購入日までの日数の差:90日以内
:よちよち客(=90日以内に2回以上購入した客))
(2)さらに、購入金額基準を加える
a) 初回購入日から最終購入日までの日数の差:90日以上
購入金額が70,000円未満
:コツコツ客
b) 初回購入日から最終購入日までの日数の差:90日以上210日未満
購入金額が70,000円以上
:流行客
c)初回購入日から最終購入日までの日数の差:210日以上
購入金額が70,000円以上
:優良客
つぎに、下記の基準で2グループに分け、合計10グループでポートフォリオとします。
(3)最終購入日から本日までの経過日数基準を加える
a) 最終購入日から本日までの日数の差:240日未満
:現役客
b) 最終購入日から本日までの日数の差:240日以上
:離脱客
CPM戦略
下記のポートフォリオが出来上がりました。
それぞれのセグメントでマーケティングアプローチをどのように考えるべきでしょうか。
その前提として、マーケット・バスケット分析、F2転換商品、初回チャネル単位でのLTV最大化傾向、コンテンツ単位のアトリビューションおよび、EC店舗相互送客トリガーは、Tableau(タブロー)やExploratoryツールを使って、いつでも確実に把握できる準備ができていると良いです。
現役/離脱 | 日数差0 (最終-初回購入日) |
日数差90日以内 (最終-初回購入日) |
日数差90日以上 ∩ 70,000円未満 :コツコツ客 日数差90日以上210日未満 ∩ 70,000円以上 :流行客 日数差210日以上 ∩ 70,000円以上 :優良客 |
||
現役 | 現役初回客 | 現役よちよち客 | 現役コツコツ客 | 現役流行客 | 現役優良客 |
離脱 | 離脱初回客 | 離脱よちよち客 | 離脱コツコツ客 | 離脱流行客 | 離脱優良客 |
当然、事業ドメイン個々によって状況は異なるため、あくまで総論のみとなりますが以下、弊社の考えを提示しておきます。
(1)離脱客には帰ってこないそれなりの深い理由がある
(2)特に強いセグメントは何をやってもどんどん勝手に伸びていく
(3)現役優良客を徹底的に喜ばせると現役初回客が自然と増えることが多い(相関性、因果関係はコアアンバサダー)
(4)マーケタースキルがもっとも問われるのは中長期的成長の鍵となるコツコツ客の育て方
(5)意外と見捨てられがちな店舗またはECからみた相互の隠れた役割と貢献がある
手順
能書きと講釈は以上として、それでは、早速、本サイトのメインテーマでもある誰でもすぐに実践できる「実装」解説をしていきましょう。データソースは、いつもどおり、付属のスーパー・サンプルストアを使用します。
(1)パラメータコントロールの作成
グループ分けの基準となる閾値をパラメータ化してみます。
a) よちよち客判定の閾値(日数)パラメータコントロール
よちよち客かコツコツ客となるかの閾値を調整するためのパラメータです。
b) 流行客判定の閾値(日数)パラメータコントロール
流行客となるか優良客となるかの閾値を調整するためのパラメータです。
c) 購入金額閾値: 円 パラメータコントロール
コツコツ客になるかまたは、流行客or優良客になるかの購入金額閾値です。
d) 離脱判定の閾値(日数) パラメータコントロール
現役客となるか、離脱客となるかの閾値です。
(2)ディメンションの作成
以下、ディメンションを計算フィールドで作成します。
顧客別初回購入日
{FIXED [顧客名] :MIN([オーダー日])}
顧客別最終購入日
{FIXED [顧客名] :MAX([オーダー日])}
顧客2回目購入日
{FIXED [顧客名]:
MIN(IF [オーダー日]>[顧客別初回購入日] THEN [オーダー日]END)
}
現役/離脱 区分
IF DATE(“2019/12/31”) > [顧客別最終購入日]+[離脱判定の閾値(日数)] THEN “離脱客”
ELSEIF DATE(“2019/12/31”) <= [顧客別最終購入日]+[離脱判定の閾値(日数)] THEN “現役客”
ELSE “未購入客”
END
// 便宜上、本日を2019/12/31と設定しております。通常は、TODAY()関数を使用します。
顧客グループ
IF [初回購入から最終購入日(日数)] = 0 THEN “初回客”
ELSEIF [顧客別購入回数] >=2 AND [初回購入から最終購入日(日数)] < [よちよち客判定の閾値(日数)] THEN “よちよち客”
ELSEIF [顧客別購入金額] >= [購入金額閾値: 円] THEN
IF [初回購入から最終購入日(日数)] >= [流行客判定の閾値(日数)] THEN “優良客”
ELSEIF [初回購入から最終購入日(日数)] >= [よちよち客判定の閾値(日数)] THEN “流行客”
END
ELSEIF [顧客別購入金額] <= 70000 AND [初回購入から最終購入日(日数)] >= [よちよち客判定の閾値(日数)] THEN “コツコツ客”
ELSE “その他”
END
// 紫色は、パラメータコントロールを表しております。
(3)メジャーの作成
続いて、必要なメジャーを作成します。
初回購入から最終購入日(日数)
DATEDIFF(“day”,[顧客別初回購入日],[顧客別最終購入日])
最終購入日からの経過日数
DATEDIFF(“day”, [顧客別最終購入日], DATE(“2019/12/31”))
// 便宜上、本日を2019/12/31と設定しております。通常は、TODAY()関数を使用します。
顧客別購入回数
{FIXED [顧客名]:COUNTD([オーダー Id])}
顧客別購入金額
{FIXED [顧客名]: SUM([売上])}
顧客数
COUNTD([顧客名])
(4)シートの作成
以下、4シートを組み立てます。
a) クロス表
各グループの構成人数が把握できるクロス表を作成します。
b) テーブル表
顧客リストが参照可能なテーブル表を作成します。
c) 散布図
初回購入から最終購入までの日数と購入金額の関係を散布図で表示します。さらに、サイズ:顧客数を配置してバブルチャートとします。
d) 最終購入日別顧客数
最終購入日別で顧客数を把握できる棒グラフを作成します。離脱客は、240日前に限定されていることが確認できます。
(5)ダッシュボードの作成
以下のように配置します。水平方向オブジェクトを3つ使って、3段に配置します。上段はパラメータコントロールを配置、中段はクロス表と散布図とその間に空白オブジェクトを入れてマージンを取ります。下段は、棒グラフとテーブル表を配置します。
(6)ダッシュボード・アクションの作成
最後に、ダッシュボードアクションを作成します。フィルターアクションとハイライトアクションが有効です。
a) フィルターアクション
下記の方向で、フィルターアクションをかけてください。
・クロス表 → テーブル表
・散布図 → 棒グラフとテーブル表
・棒グラフ → テーブル表
b) ハイライトアクション
下記の方向で、ハイライトアクションをかけてください。
・クロス表 → 散布図と棒グラフ
・散布図 → クロス表
・棒グラフ → クロス表と散布図
まとめ
本日は、CRMにおける顧客分析手法の一つ、CPM(Customer Portfolio Management( = 顧客ポートフォリオマネジメント))分析をご紹介いたしました。通常、ECサイトなどの通販運営事業においては、ECシステム標準のCRM機能または、CRM専用のサービスツールを活用して顧客とコミュニケーションしていることがほとんどだと思います。他方、Tableau(タブロー)やExploratoryツールなどを上手に併用することでシステム由来ではできなかったような柔軟な切り口で分析することも可能となり、結果、自社独自の判断や活路を見いだすことが可能になるかと思います。ただし、それを可能とするまでには結構な道のりと気力が必要になることも事実です。
あくまで大事なことはシステム導入でもデータ可視化でもなく、顧客とどう向き合ってコミュニケーションしていき、顧客の購入という「満足」を最大化しながら自社の売上をも最大化するにはどうしたら良いか、を考え抜くことです。
これを実現する場合は、しっかりと相性の良いメンターを見つけていただき二人三脚で進めていただけると良いでしょう。弊社もクライアントと「相性」さえ良ければという条件付きですが、そこが合えば、きっと良いパートナーになれると自負しております。一度、気軽にご相談お待ちしております!
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