数字のマナー(本当にあなたは大丈夫?)
はじめに
弊社は、弊社クライアントと関わるウェブコンサル会社の提案する大規模提案に対して、その提案内容と妥当性を裏側からチェックするセカンドオピニオン機能を請け負う機会が多いです。その際、運悪く数値の理解に乏しいウェブコンサルタントがその提案の責任者になってしまっている場合、提案する際の”数値のあやまり”をたくさん目にします。ウェブ関連業界のコンサルタントは特にこのあたりが苦手であり雑です。超有名なかのウェブデータコンサルテーション会社も残念なことに例外ではありませんでした。その理由として、もともと、デザイナー、制作ディレクター、システムエンジニアあるいは広告運用担当の肩書きの延長でウェブコンサルテーションを兼業している方も多い業界です。コンサルテーション専門のバックグラウンドがそもそもないことも多く、数値に関する品質管理のベースラインがそもそも皆無です。もともと、専門的なトレーニングを受けず、クライアント要望にその場その場で対応しながらコンサルテーション業務を見よう見まねで実践してきた経緯があり、それは、仕方がないことかもしれません。そこで、今回は、提案時に致命的となる例を5つご紹介いたします。もちろん、これ以外にも見直してほしいチェック要素はたくさんございますが、最低限、これらをもとに自社の提案内容を再度、最終チェックしてみてください。
ポイント① 対前年比と増加率(減少率)の区別が付いていないケース
前年度 売上100万円 今年度 売上120万円 とした場合)
対前年比:120 / 100 = 1.2(120%)
対前年増加率:(120-100)/100 = 0.2(20%増)
前年度 売上110万円 今年度 売上100万円 とした場合)
対前年比:100 / 110 = 0.9(90%)
対前年増加率:(100-110)/100 = -0.1(-10%増) ※減少率でいうと10%減
ポイント② ○% – ○% の計算結果が○ptで表記されていない
50% から 60% に上昇 = 10%上がりました ではありません。
この場合、10ptという表記が正しい表記となります。先ほどの増加率で考えると、(60-50)/50 = 0.2となります。つまり、20%の増加が正しい表記となります。毎回、%で変換するのが面倒なので10pt上がりましたと表記することも可能です。
実際に10%上がった場合を計算すると下記の通りです。
0.5+(0.5*0.1)=0.55(55%)
ポイント③ 売上200%UP = 売上2倍ではない(=売上3倍に等しい)
例)昨年売上100万から今年売上200万になった場合)
○ 売上2倍
○ 200%になった(200/100)※前年比
○ 100%UP((200-100)/100) ※増加率
× 200%UP((300-100)/100)※売上3倍と等しくなってしまう
ポイント④施策整理の優先順位づけは必ずしも”予測値”で決着しなくて良い
施策効果を予測値で表記される提案書を良く見かけます。しかし、予測値は回帰モデルや予測モデルを組み上げて十分に検証されたものでなければ説得力がありません。多くの場合、この数値は勘だけで”適当”にExcel計算されたものであり、その根拠に妥当性がありません。言い換えると、その値に意味がまったくありません。もともと、どんなに綿密に練られた予測値でもそれは外れることも多く、そのような予測値をもとに優先順位を検討することは実用的とはいえません。それよりも、複数の施策案を”相対的”に評価して費用対効果で優先順位をつける方がより現実的でかつ、実用的です。その場合、ペイオフマトリクスツールが有用です。
ペイオフマトリクスツールを使って施策同士の費用対効果を”相対的”にプロットして表現しながら決着させる方が効果的な場合がほとんどです。
この考え方をもとに、提案時に再考いただけますと幸いです。
ポイント⑤シナジー効果の考え方が大事
一つの施策だけで2倍の効果を目指すより、いくつかの施策をカバーしながら「シナジー効果」で2倍を目指す方が効果的であることがほとんどです。つまり、そのような提案をする方がより現実解となります。特に、SEO対策の場合、複数の内部施策でシナジー効果が生まれ、やがて目標達成へと繋がります。それが大前提となります。そのような提案がなされていない提案は、弊社もコンサル契約をお断りした方が良い旨、強く意見打診しております。
SEO対策提案時の場合)
キーワード対策 x 基本SEO対策(TDH) x コンテンツ品質 x デザイン・表示速度 x ディレクトリ構造 x ドメイン・内部リンク構造・掛け合わせ対策 x 被リンク
→ 1.1 * 1.1 * 1.1 * 1.1 * 1.1 * 1.1 * 1.1 = 1.948
コンテンツ品質だけで頑張る提案は、現況、無理であることも多いです。
参考まで 分数を使って説明するととても効果的
「分数」の特質性を使って、提案を論理的に進めるられると効果的です。分数の解釈方法としては、① 全体に対する割合、② 1単位あたりいくらか の2つがあります。①と②のそれぞれでいえる共通概念としては、全体の数を大きくする(増加する)には、a)分子を増やすか、b)分母を減らすかあるいは、c)分子の増加率>分母の増加率の関係で双方の値を増やすか、いずれか3つです。全体の数を小さくしたい場合は、その逆となります。
例えば、CPAを小さくしたいというお題であれば、分母となるCVを増やすか、分子となるCostsを減らすかあるいは、その両方が考えられます。このように、分数の特質性を使うことでクライアントには馴染まのないウェブ指標も「共通言語」として成立させることができます。
さらに、もし、CVの増加が必要となった場合は、CV = CVR * セッション の関係式が成り立ちますので、仮にセッションが現状維持(=1)と仮定する場合、CVRを上げていく必要があります。CVRは、回遊率 * カート到達率(フォーム到達数/回遊数) * カート完了率の関係式が成り立ちますので、LPO対策 * カート送客対策(サイト内接客) * EFO対策 のいずれかまたはすべてが必要ということで説明がつきます。シナジー効果として捕捉するか、一極集中で対応するかはサイト全体分析結果次第です。
まとめ
今回は、数値にまつわるマナーという観点をご紹介いたしました。もちろん、今回ご紹介したケース以外にもたくさんの落とし穴があります。その中でも確実に足を取られる部分を5つピックアップしております。今後、クライアントに対して大規模なご提案を実施する場合は特にご注意いただけますと幸いです。
数値遊びは、下記のページも参考にしてみてください。