※注意)弊社代表の独断と偏見です
WEB KPI設定モデルの変遷について振り返ってみた
今回のテーマ
本日のテーマは、WEB KPIモデルの変遷について振り返ってみたいと思います。
さまざまなクライアントへ、改善コンサルテーションするにあたり、
最初に、過去・現在のウェブ戦略とKGI/KPI設計について、最初に確認させていただくことにしております。
ほとんどの場合、おおよそ、KPIについては何らかのカタチで設定されております。
ただ、KPIとひとことでいっても、三社三様。クライアントによってさまざまなKPIが設定されております。
その中には、そのKPIを達成すると…
結局、どうなるの??といった、あまりうまく設計されていないKPIがそれなりに見受けられます。
そこで、本日は、このKPI設定モデルについて確認してみることにします。
目次:
(1) KPI設定モデルとトレンド
(2) まとめ
(1)KPI設定モデルとトレンド
①初期型モデル
②因数分解型モデル
③ファネル型(前期モデル)
④ファネル型(後期モデル)
⑤カスタムKPI その1
⑥カスタムKPI その2
①初期型モデル
KPI)セッション, PV , UU, 滞在時間, 新規UU,リピートUU など
数十年前、当時私がまだ開発エンジニアだった頃、常駐していたとある企業の朝礼で、
これらの指標を毎日計測して、毎日読み上げる光景をよく目にしました。
当時、アクセス解析を取り入れている先進的な企業として、一目置かれている企業でした。
ただ、残念なことに、PV数値などの単独指標目標を達成しても、
事業目標達成との因果関係はあまり明確でなかったようです。
おそらく、事業目標(KGI)とこれらのKPI達成にはあまり因果関係がなかった点が理由として挙げられそうです。
とはいえ、これが当時のKPI設定の代表例でした。
初期型モデルのKPI設定例)
②因数分解型モデル
KPI)KGIとの因数をKPIとするパターン
◆ECサイト(売上)
KGI = KPI(訪問数) x KPI(注文率) x KPI(客単価)
◆リード獲得サイト(受注件数)
KGI = KPI(訪問数) x KPI(申込率) x KPI(商談率) x KPI(受注率)
比較的ゴールがはっきりしているサイトについては、KGIから因数分解するパターンが出てきました。
2011,12年頃には、それなりに定着しはじめたKPI設定例です。
こちらは、KPIを達成してもKGIが達成されないといった初期型モデルの欠点をそれなりに補完した点が特長的です。
ECのKPI設定例)
ただし、このKPIにも欠点がありました。
KPIとしての数値が到達していない点は明確になりましたが、
サイトのどこがよくないのかがいまいち、釈然としなかった点です。
どこがよくないか。結局のところ、人の感覚で対応するしかありません。
とはいえ、本来のKPIとしての定義に近づいた点では意義は大きかったです。
③ファネル 型(初期モデル)
KPI)因数分解型KPI + ファネル遷移率KPI(直帰率, list to detail, detail to cart, cart to buy , CVR)
②のKPI設定モデルに、ファネルという概念を取り込みました。
これにより、②の欠点となった、どこが良くないかをある程度段階的に絞り込めるようになりました。
ECのファネル型(前期モデル)設定例)
訪問数 x 注文率(CVR) x 客単価 +
ただし、こちらにも欠点が出てきました。
それは、スマホデバイスの普及によって、デバイス毎の差が顕著になってきました。
一緒くたに語れなくなったのです。
デバイス毎に細かくみていく必要が出てきました。
連動して、経路によっても状況差が出てきました。
2015年のスマホデバイス利用加速により、デバイス差はさらに顕著になりました。
④ファネル 型(後期モデル)
KPI)因数によるKPI +(各種セグメントの掛け合わせパターン x ファネル遷移率KPI(直帰率, list to detail, detail to cart, cart to buy , CVR)
ファネルという概念に、セグメントを掛け合わせる方式です。
これにより、③の欠点となった、各種セグメントごとに、どこが良くないかを
かなり特定して絞り込めるようになりました。
ECのファネル型(後期モデル)設定例)
訪問数 x 注文率(CVR) x 客単価 +
ただし、こちらのモデルにも欠点があります。
① 良くない箇所をかなり狭い範囲で特定できるようになったものの、
その特定箇所が伸びしろかどうかは推測の域を出ない
これを解決するにあたっては、ユーザーの質をあわせてみていく必要が出てきました。
ユーザーの質とは、ユーザの成熟度 と考えてください。
⑤カスタムKPI その1
先述した④ファネル型(後期モデル)をもとに、
例えばスマホデバイスの商品詳細の直帰率が高いことがわかったと仮定します。
このモデルでは、どの経路で直帰率が高いか、新規とリピートのどちらで直帰率が高いかを深掘りすることが可能です。
そこで、対応が必要そうな特定箇所が明らかになったとします。
しかし、本当に、そこで直帰率を下げる対策を実施すると効果がしっかりと得られるといえるでしょうか。
実は、そうならない場合があります。
もし、じっくりと精読して直帰していたことがわかった場合、商品詳細ページを改善する余地はもうないだろうと判断できます。そのケースでは、それ以上の改善は難しいでしょう。
このように、最終判断するために、そこに、”熟読率”といった質を測るための独自の指標を掛け合わせる必要が出てきました。
現在のKPI設定モデルの主流の一つは、このファネル型(後期モデル)を基礎としながら、独自の指標を掛け合わせるモデルです。
独自の指標 = カスタム指標例)
・会員ランク状況を掛け合わせてKPI設定
KPI設定例)購買意欲の高まったプラチナ会員 & スマホカート完了率70%以上で正常
・熟読状況を掛け合わせてKPI設定
KPI設定例)スマホdetail直帰率50%以下 & 熟読率30%以上で正常
・既購入数状況を掛け合わせてKPI設定
KPI設定例)サンプル購入数1回以上 & 本商品未購入ユーザ & 本商品詳細ページ離脱率5%以下で正常
これらの独自指標から独自のKPIを設計すると良いです。
上述した内容をまとめた設定モデル)
独自指標については、通常、Googleアナリティクスの標準指標では用意されておりません。
そこで、Googleタグマネージャなどの仕組みを利用して指標をカスタマイズしながら自分たちでデータ指標を設計して取得するために実装する必要があります。
その点がとても大事です。
これらのKPI設定モデルは、主に、ECサイトやリード獲得サイトといった、比較的ゴールが明確なサイトモデルで特に有効です。
今後、かなりの精度で、”どこが良くないか”、”直す必要があるかどうか”を特定・判定できるようになります。
⑥カスタムKPI その2
しかしながら、サイトゴールがはっきりとしないブランドサイト・コーポレートサイトでは
これらのKPI設定モデルはほぼ通用しません。
このタイプのサイトは、顧客に最終的にどうなって欲しいのかを自ら考えてゴールを設定します。
そして、スタートからゴールに向かう流れで成熟度(ステップ)を決定します。
そして、顧客の成熟度(ステップ)に合わせて、各成熟度ごとのユーザーの気持ち・満足度を計測することがとても大事だからです。
今までのKPI設定モデルでは、このユーザーの気持ち・満足度をうまく取り込めません。
したがって、より良いKPIを独自に設計/設定する必要があります。
これを解決するための最適なKPI設定モデルが、清水誠さんが提唱する「コンセプトダイアグラム」です。
ここで定義された”ステップ”に対して、KPI設計・設定(ステップ定義)する手法がとても有効です。
このタイプのサイトにおいては、今後、主力となるモデルと考えます。
詳しくは、上級ウェブ解析士講座や、http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2016/01/05/21794が詳しいです。
この図解を利用して、ステップ定義書(KPI定義書)が作られるイメージです。
(2) まとめ
今回は、KPI設定モデルについて、そのモデルの変遷とともに中身を確認してみました。
従来、KPIを設計するにあたり、あまりユーザーの気持ち・満足度を考慮できておりませんでした。
現在、このユーザーの気持ち・満足度を無視できないくらい、ユーザー個々の影響力が強くなっております。
特に、ブランドサイト・コーポレートサイトでは、顧客成熟度にあわせた、気持ち・満足度に寄り添ったKPI設定がとても大事です。この設定が的確にできるようになると、KGIに対するインパクトが高まるKPIとなります。
上記観点で、いま一度、KPI設計・設定を見直してみると良いと思います。
こちらの書籍が参考になります!)